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【クオ・ヴァディス】

    
 
上の図は、松井孝典著「宇宙人としてのき生き方」のなかの”我々はどこへ行くのか”−人間圏の現状と未来ーで示されているものである。

もうひとつは「宇宙は見つめられることによって、初めて存在する」というジョン・ホイラーの視線。

この二つの座標は、渾然と交わっている。


 
    

     「クオ・バディス」

     使途ペテロが、キリストに、「主よ、いずこへ行きたもうう」(QuoVadis,Domine?)と問いかけた言葉。

     初期キリスト教徒の、ローマ皇帝の暴君ネロの迫害を受けながらも受難の道を歩む姿。


     1896年刊行のシェンキェーヴィチの歴史小説「クオ・バディス」。


     作者は、これを題材に独立への道を歩む祖国ポーランドに重ね合わせた。

    

     我々はどこから来たのか。


     我々は何者なのか。


     我々は何処へ行くのか。


    いま、この問いは、いっそう重く、かつ思いはとみに強い。


     <地球よ、人類よ。汝いずこへ行きたもう!>


                                    07年2月25日(日曜日) 今日じつは自分74回の誕生日ーーーーー

                                   松井孝典著の『我々はどこへ行くのか』(ちくまプレミアム新書 07年2月10日初版第一刷り発行)が届いた。

                                   以下は、その本に学んだことの、自分勝手流な要約覚書である。

    ☆

   <宇宙の果て>(同書<あとがきにかえて>より)

  

    宇宙の果てとは、その人の脳の内部モデルの限界のこと。


    つまり、あなたが、「銀河系はイメージできる」なら、


    「銀河系の外側には、銀河系みたいな星の集団が何千億もあって、それがバラバラに分布していますよ。それが宇宙です」と。

  

    そのように、それぞれの人の持っている知識の限界が、宇宙の果てだと言われる。


    「宇宙は見られることによって、初めて存在する」というホイラー氏の言葉と、これらは、お互いに呼応しているように私には思える。


 
  

     ☆ 

   <われわれはどこから来たのか> 


     ●そもそも、「われわれとは」 何か。

     要は、16万年くらい前に、アフリカに誕生した「ホモ・サピエンス」で、ただ一種類だけの現生人類。


     生物学的には、「ヒト」という生物種である人類は、700万年来、連綿として存続してきた。


     その間、色々な種類の人類が、次々に”生まれては消え”を繰り返しながら来た。そして、16万年ほど前にわれわれの先祖が誕生したという。


     ミトコンドリアDNAをたどっていくと、アフリカにいた一人の女性につながているといわれ、彼女は、アダムとイブの旧約聖書にちなんで、


     「ミトコンドリア・イブ」と名づけられているという。



     

     ●では、「どこから」ここに来たのか。


      地球という惑星の上に出来た「人間圏」がわれわれのすみか。 

      「地球システム」の構成要素は、はじめ、原始大気と溶岩の海とコアと呼ばれる物質圏、この三つくらいだった。


      それが、 いまは構成要素が、10いくつにも増えている。     

      「物質圏」では、プラズマ圏(電離している上空)、大気圏、海洋、大陸、岩石層の地殻・マントルのプレート、その下に内核(固体)と外核(液体)のコアがある。 

    

      その地表には「生物圏」と「人間圏」が形成されている。


      このように異なる物質圏に「生物圏」と「人間圏」が加わって、地球はひとつのシステムを構成している。

      この「人間圏」の来歴と越し方に問題があるのだ。




     ●「関係性」について



      海から水が大気圏に移動し、大気圏から水が大陸地殻に移動し、大陸地殻の侵食によって大陸物質の一部が海に移動して、塩分となって海の中にたまる。

     

      地球的な物質循環。これに伴ってエネルギーの受け渡しが行われる。


      「関係性」は、このような物質循環である、と同時にモノやエネルギーの移動でもある。


      このモノの移動には、駆動力が要る。


      駆動力の根本は、太陽の放射エネルギー。太陽の放射するエネルギーによって、地表が温められ、大気が移動し、海が循環する。


      また、地球内部にもエネルギー源がある。


      それは地球が出来たときにため込まれた熱、或いは、放射性元素の崩壊で発生する熱が、駆動力となってマントル対流が起こり、


      コアに対流が起こったりしている。


      地球には、このような駆動力によって、構成要素内に対流が起こり、モノやエネルギーが輸送される。


      構成要素・駆動力・関係性の三位一体になっているのが地球システムである。


      われわれは、そのなかの「人間圏」から来て、ここに滞留しているのである。


   
      


      ☆

    

      <われわれはどこへ行くのか>



      ● 地球システムの一員、「人間圏」の行方は

 

       われわれ以外の動物は、「生物圏」の中に位置づけられている。

       われわれは、太陽エネルギーの流れを変えて生きる農耕牧畜という生き方を始めたとき、地球上に新しい構成要素としての

       「人間圏」を作ったのである。

       アルベルト(太陽の光りの地表反射率)を変えていく文明とは、「宇宙的視点から見れば、人間圏を作って生きる生き方」と氏(松井孝典博士)は定義できるという。

         「生物圏」の中に閉ざされた状態から脱して、われわれ現生人類は「人間圏」を、一万年程前に作ってきた。

      

        それは今や、地球システムのサブシステムとなり、「人間圏」自体もひとつのシステムを形成している。

    

        この「人間圏」の行方が問題になってきた。

        そのことについて、松井地球学独特の見解が提示・提唱される。

         つまり、人間圏内部に、

                      駆動力を持たない段階が、「フロー依存型人間圏」

                      駆動力を持った段階が、ストック依存型人間圏」

                       この境界線が、産業革命。 

       農耕牧畜に続いて、石油・石炭を動力にりようを始めて、「人間圏」のなかに駆動力をもった。

       人間圏の構成要素のひとつは「国家」であるが、近代国家成立以前は、ローカルな人間圏が世界各地に散らばっていた。

       たとえば、江戸時代は日本列島の上に同じ人間圏があり、太陽光と雨などを物質循環として利用したモノの生産であり、エネルギーの利用にとどまっていた。

      人間圏の内部に駆動力を持たないこの段階では、食料の生産も限られ、人口もほぼ一定だった(3000万人くらい)。

      地球システム論的に考えれば、産業革命以後の人間圏が、日本では明治維新後の人間圏。

                                           (当時の日本人口も約4倍の1億200万人。世界人口は15億人が、60億人になった)

      この段階では、化石燃料やウラン鉱物資源などを利用する駆動力となり、地球システムのほかの構成要素に蓄積された物質(ストック)を取り出して消費するようになる。

      この「ストック依存型人間圏」の誕生は、地球の時間を急激に速めてしまった。

      生物圏がつくられて20億年、人間圏が生まれて1万年であるごが、今われわれが一年間に動かすモノやエネルギーの移動速度は、地球の営みとしての移動速度の10万年分に相当するという。

      それは、つまり、時間を10万倍速めている、ということになる。

      1万年の10万倍ということは、10億年。 もうすでに、それだけ存続しているのと同じくらい、地球上のモノやエネルギーの流れを消費している、ということになる。

      遺伝子操作も、時間を速めることにつながる。

      生物の進化とは、遺伝子が変わることであり、それを人為的に加速させることが遺伝子操作である。

      環境問題も同様であり、いづれも時間を短くする。



  

       ●人間圏の存続のためには時間をゆっくりさせること


      人類はもともと、それぞれの土地で、その土壌を反映したような血を受け継いでいる。

      日本という風土と歴史のなかに存在するのが日本人だが、それが今やグローバル化してししまい、正確には日本人などという人間はもはや、存在しないのではないか。

      従って、これをもう一回、地域に閉じた物質循環に戻さないと、この先、人間圏は長続きしない。 

      われわれが物質循環の時間を速めて、それこそ、5億年先のような状況をつくれば、モノを使うという意味では、どこかで枯渇するようになる。

      「そういう意味では、われわれがいつまでも20世紀的生き方を続けていれば、21世紀の半ばには、地球システムから人間圏にモノとかエネルギーの量に行き詰まりが生じるようになります。」

       と氏は警告する。

      「その結果、われわれが20世紀に築いてきたさまざまな共同幻想が破綻します。その結果として人間圏も破綻するということになります。」

       このように述べられ、例えばわれわれを取り巻いている貨幣というのも、じつはそれがいつでもモノと交換可能であるという共同幻想の上に成り立っているのであり、

       この共同幻想の破れがいろいろなところに出てくるために、人間圏の内部システムが破綻することを指摘されている。

        そして、

       「われわれが生き方に関する考え方をかえるということと、物質循環の時間をより長くする工夫をするという以外に、この先も人間圏を維持していく道はないのです」

        という。 


       この発言こそ、われわれにとって、最も深刻であり、かつ最大の教訓としなくてはならない。

                                                                       (07/2/27) 


       ☆ 

 
       2月の終わりの今朝の地方紙(2月28日「高知新聞」)に、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第一作業部会が公表した第4次報告書の記事が大きく掲載された。 

       6年ぶりに公表された報告書は、産油国など一部の国や産業界の「人間活動が原因だとの科学的根拠がない」という懐疑論を覆すものとなった。

       つまり、人間が排出した温室効果ガスの増加が、地球温暖化の原因であることをほぼ断定したのである。

       同部会の共同議長であるソロモン博士は

       「大気中の温室効果ガス濃度の上昇が、人間活動の結果であることも疑いない」」と明言した。

        気温上昇予測については、地球の平均気温が、最大5.8度としていた第三次報告を上方修正して、

        21世紀末には、最大6.4度上昇すると予測した。そして、

        現在の二酸化炭素の大気中濃度が、過去65万年の自然変動の動きをはるかに上回っていることが判明したという。

        さらに、過去50年の温度上昇は、10年間に0.13度と、過去300年間で最も大きいものであることも突き止められている。




        松井孝典氏の提唱とIPCCの警告に、われわれが,どのように早く対応できるのかが、

         畢竟、「クオ・ヴァディス」という問いかけ対する答えなのではないだろうか。  (07/2/28)                          

 

   

  

       ☆

 

        <これからへの提案>

        ●レンタルの思想

         (「松井孝典著『宇宙人としての生き方ーアストロバイオロジーへの招待』岩波新書2005年9月第6刷発行」の要約引用より)

   


         我々が、人間圏の新しいユニットとしてどういう共同体をつくっていくのか。 

         そのためには新しい思想が必要で、それが”レンタル”の思想だ。

         我々の存在そのものも実はレンタル。我々は自分のからだを自分の所有物だと思っているが、しかし、これは物として地球から借りているに過ぎない。

         死ねば地球に返る。借りたものから、各種の臓器をつくり、臓器の機能を使って我々は生きている。

         物が重要なのではなく、その機能が重要。したがって、所有ではなく、レンタルという格好で物の機能を使えばいい。

         レンタルという意味は、物でなく機能を使うことです。物としては」返す。

         このような考え方で、これからの人間圏を考えたらどうか、という提案である。 「所有」に対するアンチテーゼは「借りもの」、すなわち「レンタル」」。

    

         このような発想から、新たな共同幻想が生まれ、これまでの所有を前提とするのではなく、欲望を制御できる方向にいけば、新しい人間圏が見えてくるのではないか。



          以上、素人が大変勝手な自分流の切り口で引用させていただきましたが、松井ま孝典著『宇宙人としての生き方』 は次のように締めくくられています。

 
          「知的生命体が生まれると宇宙を認識する。宇宙は、それを認識する主体によって認識された瞬間に存在したことになる。

          これは、宇宙論のなかでも、人間原理という考え方ですが、これは我々にとって、一つのレゾンデートル(存在理由)と考えることも出来ます。

                              (中略)          

          人間圏の内部に閉じ、人間を絶対的な存在として全てを考える人間中心主義的な人が陥りがちな考え方へのアンチテーゼとして、宇宙人という知性が存在すれば こう考えるのではないか、という考え方を紹介してきました。

          我々自身も宇宙人として、宇宙から俯瞰して我々自身のことを相対的に語る、lそういう視点をもたない限り、文明の未来は暗いと思うからです。

          宇宙人としてどう生きるかを考えない限り、これからの地球システムと調和的な人間圏=文明はありえないと思うからです。

          また、そのような視点から二十一世紀の科学が創造できるのではないか、その一つがアストロバイオロジーである、ということで簡単な紹介をしてきました。」



          氏が提唱される、このよう扉を開くときにのみに、明日に虹がかかる、全てがそこにかかっていると、しっきりに思うひとりである。

                                                                      窪川谷 イチカワ   2007年3月2日 稿