2010年01月19日(火)
地球時代の地域主義考D [時評]
そもそも地域主義の原点は、水土の思想にある筈だ。
生命系としての水と土との不可分な相関関係を機軸に近代化のもたらせた産業構造を見直し洗い直すところにこそ、地域主義の現代的な重要さがあり、マネー資本主義が招いた世界的経済危機、景気混乱を回避する道が開けるものと思う。
土地とは土地とその上の生物を指すと、名著『小さいことは美しい』の著者シューマッハーはいっている。その土地が水と結びつくことによって生産活動が行われるのが、生きている地域なのだ。
いまなぜ地域主義か、それは近代化に付随した危機の回避、一極集中、市場経済至上主義的なこれはでの方向を転換する、バランス回復の座標軸の不可欠な必要性のゆえではないのか。地域でできることは地域でというのは、地域分権の方法の一端に過ぎない。
生命共同体としての地域を、国家戦略的に再生することが基本に据えられなくてはならない。
そこから具体的な政策が新たに展開されてこそ、その意義を発揮できよう。
地域主義の役割は、崖っ縁におかれている状況の中から、地球時代の生命系を守り育てることである。
そこでの第一産業は、「生きている自然」という場での生産活動が持続可能な、共生の21世紀的産業の典型たり得るものだ。
地域主義の対極にあるのが、新自由主義的構造改革である。それが現在の問題としての、格差・貧困、経済危機・不況、財政危機をもたらせた。神戸大学の二宮厚美教授は、この難題解決の糸口は、「垂直的所得再分配の再構築による内需拡大」にあるという。(2010年1月11日 高知新聞 時・人・言)
その垂直的所得再分配とは、富裕な上層から資金を吸い上げて貧困な下層の所得にまわすことだと書かれている。そして、鳩山政権は、新自由主義構造改革路線に足場を置く下半身と福祉国家志向の上半身との両面があり、そのねじれを指摘している。「人のいのちを大切にし、国民の生活を守る政治が、この内閣の上半身である。この上半身部分が下半身を抑え込んでいない。
その結果、「人間のための経済」で「市場の経済」を払拭できていない、と警告されていた。
いま政治とカネや米軍基地の問題が、政局を揺るがせてはいるが、し
かし、短期的なスパンで揺るがされているのは世論調査であり、いまの政権をチェンジした時の流れは止まらないだろう、とわたしは思う。
時の流れは新たな「平衡の世界」を求めているからだ。
このところ期待半分、不安半分と言われている政府の「地域主義戦略会議」の船出にあたり、現在、足を引っ張ることだけに懸命な混迷の国会や政局おもしろばなし的な番組の軽薄さを世にさらすマスメディアなどに振り回されず、大胆にジャンプする再出発をしてほしいものだ。
その再出発に際して、わたしは、何度でも繰り返し、今の世に訴えたい。それは、かつて玉野井芳郎氏が問いかけた『生命系のエコノミー』という本に書かれている次の一文である。
「農・林・牧畜・漁業の活動は、どれもみな“生きている”ものにかかわる人間の活動であり、そしてそれは取りも直さず人間の生命を維持・更新する産業活動にほかならない。その点で、他の諸産業と根本的に区別される。
かくてわれわれは、エコロジーまたはエコシステムを踏まえながら、生きている系を社会システムの根底におくことによって、非生命系のフィクションの世界に生命系の人間世界を対置させることが可能となるのである」
玉野井博士は、すでにお亡くなりになって久しい。だが、現世代がクライシスのまっただ中に置かれているとき、この視座の何と予見的なことか。
この視線に映ずる回路こそ、私たちのこれから歩むべき方向性を正確に指し示している。
常々そうわたしは確信している。
ともあれ現代日本の悲劇は、日本の風土・伝統、歴史からの切断にある。
また、世界的な現象として、断片化が生じさせた全体性や包括性の喪失が、人々を歪化してしまっている。
この不毛な精神地帯には、精神力の強い「異質」や「風狂」は育たない。すべてが一般化して画一的・平準的な存在になっている。
象徴的なのは一歩遅れの政界である。
そこには、哲人統治も徳治もすでに遠い過去になってしまっている。
まるで展望なき、行き先不明の列車の中だ。
われわれはどこに居るのか、どこに行くのか、不安のまま多くの人々は神経をすり減らし、追われるようにセカセカ動きまわるだけの状況が現在である。
「異」たり得る「狂」なるものが姿を消した精神の空白地帯。それを克服できる政治、経済のしもべから脱出した新しい世紀の政治が創造されなくてはならない、わたしは切実にそう思っている。
Posted by ichikawa at 15時25分 トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
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