市川和男のブログ

私の書斎には色々なものがある。

かって三十年ほど携わってきた諸々の計画の下書きや、役職時代の原稿などが、

なぜか捨てがたくてうず高く置かれている。

1

2010


          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

検索


カテゴリーリスト

2010年01月20日(水)

美しい世界のなかで−生と死の往還@  [遺書的習作試行]

生と死の往還する世界のなかで¥章

 言葉の骨董探し  

 わたしは、いま言葉の骨董弄りに没頭している。古典や仏典からの落ち葉拾いのようなものだ。
 これまでの日々なか、自分の魅せられた言葉探しの逍遥、とでも言えようか。

 骨董と言えば、ここに当てはまるわけではないが、おもしろい文章が目についた。

「ジイちゃんの眼は、あらゆる場合に光っており、次から次へと面白い発見をしたが、何といっても古い美術品には、しっかりした美しい形があり、それをわが物にすることによって、人生の糧としたのであろう。
 物を食べるように骨董を買い、骨肉化した人間が、単なる蒐集家や美学者になれる筈はない。世にいう鑑賞陶器とはちがって、どんなに高いものでも身近において使いこなし、生活の味がつくのを楽しみにしていた」

 白州正子著『遊鬼』のなかにある「何者でもない人生 青山次郎」の一節だ。

 そこに青山次郎自身の話し言葉が載っている。たとえば、

 「ほら、コップでもピンと音がするだろう。叩けば音が出るものが、文章なんだ。人間だって同じことだ。音がしないような奴を、俺は信用せん」

 「自分は日本の文化を生きている」

 白州正子は書いている。

青山次郎の文章、

 「それは隅から隅まで醒めた文章で、よけいなものの一つもない、骨だけ見せたような文体であった。その範囲において申し分なかったが、文章も生きものであることを、ジイちゃんは忘れていた。読者とともに呼吸をし、同じリズムで歩んで行くことを、無視したように思われる。いや、そんな分かりきったことを知らなかった筈はない。知りすぎていたために、分かりきった言葉を抹殺し、人に快感を与えるリズムや形容詞を拒絶したのである。
 結果として、世間に通用しない作品となり、私の記憶では創元社から五百部出版した『眼の引っ越し』は、贈呈本のほか殆ど売れずに終わった。生まれつき才能がなかったと言ってしまえばそれまでだが、ここでも物が見えすぎることの辛さを、ジイちゃんは苦い思いで噛みしめていたに違いない」

 また二郎の絵について、

 「彼が好んだのは、主として風景画で、一枚一枚の葉にも心を込めて描いた。それは抽象画ではなかったが、自然にはあり得ない景色であり、またどこかで見たことのあるような、将来見るかも知れないといったような、不思議に予感めいたものを感じさせた」

と正子は書いている。

 「ジイちゃんは三年この方、寝たきりの病人になっていたが、私はお見舞いに行かなかった。訃報を聞いたのは、熊野の山奥へ取材に行っていた時で、何故か私はほっとした。これは自分でも不思議であり、申しわけないことに思ったが、今でもほっとしていることに変わりはない。 彼は晩年、親の遺産を継いで金持ちになり、暮らしには困らなくなっていたが、その生活はストイックなものであり、それも遊びと放浪に徹し切ったストイシズムであってみれば、もはや見るのが辛かった。」

とある。青山二郎は七十七歳でなくなった。

 青山や小林秀雄らに可愛がられ、その才能を伸ばし育った白州正子は、昭和五十五年の『暮らしの手帳』春号で、彼女ならではの追悼の文を書き残した。

 これを引用しながら、わたしの思ったこと、

 その一つは、精神力の強い時代であった当時の「狂」と「異」である。

 二つには、わたしも、【和男のブログ】などのように、自分が納得するためにしか、ひとには通用にないような文章しか書けないこと。

三つには、「人間の死」という事柄だ。 
 

Posted by ichikawa at 18時05分   トラックバック ( 0 )   コメント ( 0 )

トラックバック

トラックバックURL

http://suisyouu.com/blog/tb.php?ID=237

コメント

コメント投稿フォーム

名前:(この情報をCookieに保存させたい場合にチェック)
メールアドレス: (表示はされません)
URL: (名前にリンクされて利用されます)
コメント:
パスワード: (削除時に利用)

ページのトップへ ページのトップへ

PHOTO

花姿

花姿

花姿ー2

花姿ー2

時々の思い

時々の思い

広告

にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
にほんブログ村 小説ブログ コラムへ
にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学・思想へ
ブログランキング・にほんブログ村へ

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

リンク集

RSS1.0

[Login]


powered by a-blog
Copyright (C) 2008 ichikawa All rights reserved.